国旗のパターンと三色旗の歴史
国旗は、数種類の基本的な型(パターン)で作られています。
いちばん多くの国で使われているのが、三分割のパターンです。旗を横か縦に三等分にして、3つの色を塗り分けて作った旗。これを、旗の用語で三色旗といいます。
もともとは、16世紀にオランダで独立戦争が起こった時に使われた赤・白・青の国旗が、三色旗のはじまりです。( 最初は赤ではなくオレンジでした )
独立後のオランダは、貿易と商工業が盛んな豊かな国へと発展しました。1950年代には神聖ローマ帝国の領土だったオランダが、世界で最も優れた海上帝国になるまでの変遷は「オランダの奇跡」とまで呼ばれています。そんなオランダの旗を真似て、ロシアや他の国々は、色や向きを変えて、自分たちの国の三色旗を作りました。
しかし、三色旗が今のように世界中に広まったのは、オランダではなくフランスの国旗がきっかけです。18世紀に世界に大きな影響を与えたフランス革命で掲げられたのが、トリコロールの愛称で知られる、フランスの国旗だったのです。
当時の世界では、王様や貴族たちによって国が支配されていました。理不尽な搾取に苦しんでいた各国の民衆は、フランス革命によって触発され、各地でさまざまな革命が起こります。
ここから、世界の国々は「王の国家」から「人の国家」へと、少しずつ移り変わっていきます。
フランス革命で掲げられたこの三色旗(トリコロール)は、革命晴れてフランスの国旗となり、自由・平等・博愛の象徴として、世界に広く知れ渡るようになりました。
そして、たくさんの国が三色旗を使うようになります。特に、ヨーロッパの中心ではほとんどの国が三色旗を採用しています。
三色の中に込められた、いろいろな意味
ヨーロッパで三色旗を使っている他の国々も、三つのそれぞれ違う色によって、各国の歴史や特徴をあらわしています。
国旗によく使われている色の中では、赤の使われ方に、国旗の特徴がよく表されています。赤は、国旗のデザインの中では「血」の意味で使われていることがかなり多いです。
血と聞くと少しダークなイメージがありますが、国が独立する時や革命がおこる時、戦争でたくさんの血が流れたことを考えると、自然なことなのかもしれません。それぞれの国が歩んできた歴史の重みと、革命や戦争で流した血を無駄にしないという、未来への希望の意志が込められています。
絵画で学ぶ世界の歴史
フランスの旗が描かれた、ドラクロワの絵画
ウジェーヌ・ドラクロワ
『民衆を導く自由の女神』
(1830年 ルーヴル美術館所蔵)
フランス革命の後、フランスの政治は、王様が支配する「絶対王政」から、君主ではなく人民が主権を持つ政治体制「共和制」へと移り変わりました。しかし、ヨーロッパ中を支配したナポレオンがいなくなると、フランスの王政は復活します。。
ドラクロワが描いたこの絵画は、王政に戻ったフランスに再び革命の嵐が吹き荒れた時(フランス7月革命)の、激しい市街戦を題材にしたもの。中心に描かれている、三色旗を掲げ民衆を導いている女性は、フランスのシンボル、マリアンヌ(Marianne)。マリアンヌは、フランス共和国を象徴する女性像・またはフランス共和国の擬人化されたイメージとされ、自由の女神として知られています。
※フランスは復古王政の間(1814〜1830)は真っ白い旗を使っていたので、このときもトリコロールは革命派の旗として使われました。フランス7月革命によって「第二共和制」が成立したあとは、体制が変わっても現在の国旗がずっと使用されています。
のちに、フランス政府は革命を記念するために、この作品を買い上げたそうです。