イギリス
イギリスの国旗、ユニオン・ジャックの由来
ユニオン・ジャックとして有名なイギリスの旗。この呼び名の「Jack」というのは、本来は海上で国籍を見分けるために使う旗のこと。厳密に言えば、陸上で使う場合はユニオン・フラッグなのですが、ユニオン・ジャックの呼び名はあまりにも有名です。日本ではイギリス国旗の総称として使われています。
さて。この国旗はどのように生まれたのでしょう。
そもそも、イギリスという国の中には、イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドという4つの国があります。
国旗のデザインは、この中の3つの国の守護聖人の十字旗を組み合わせて作られました。
イングランドの聖ジョージ旗(白地に赤十字)🏴と、スコットランドの聖アンドリュー旗(青地に白の斜め十字)🏴、アイルランドの聖パトリック旗(白地に赤の斜め十字)の3つです。
実際には、当時アイルランドに聖パトリック旗というものは存在していませんでしたが、デザインを調和させるためにX字型の十字を持ってきて「これは聖パトリックの旗で、アイルランドの旗だ」と創作したという話もあります。
イギリスの国旗は、紋章学にのっとった優れたデザイン・配色から、世界の国旗のデザインや旗章学に大きな影響を与えました。同時に、間違えやすい国旗のひとつでもあります。よく見ると左右対称ではなく上下が決まっている国旗なので、掲揚したり扱う際には注意が必要です。
※また、国旗の縦横比を3:5や2:3に変更するときには、デザインが若干調整されます。
Union Flag: approved designs - College of Arms
ユニオン・ジャックとイギリスの歴史
1277年、イングランド王国が国旗として聖ジョージ・クロスを採用。この国旗が1606年まで継続して使われていました。
1603年、大英帝国の礎を築いたイングランド女王、エリザベス1世が亡くなります。独身で後継者がいなかったため、遠い血縁のスコットランド王が新たに王様に迎えられました。彼は、スコットランドの君主であると同時に、イングランド王ジェームズ1世となり、2つの国は共通の王様を持つ同君連合王国となりました。
1606年、ジェームズ1世は、イングランド🏴とスコットランド🏴の国旗を合わせた連合旗、ユニオン・フラッグを作りました。1707年には、この2つの国が合併し、グレートブリテン連合王国が成立します。
その後の1801年、イギリスがアイルランドも併合し、グレートブリテン及びアイルランド連合王国が成立しました。こうして、ユニオン・フラッグに赤いX字の十字が加わり、今の国旗のデザインになりました。
1922年のアイルランド独立戦争後には、アイルランドが自治権を獲得しアイルランド自由国となりましたが、北アイルランドは選挙によってイギリス連合にとどまることになり、イギリスはグレートブリテン及び北アイルランド連合王国へと国名を改称しました。
イギリスは産業革命以降、大英帝国として世界に君臨しました。全盛期には、なんと全世界の陸地と人口の4分の1を版図に収め、世界史上最大の面積を誇りました。イギリスの植民地だった諸国・イギリス連邦内の独立国など歴史的に深い関わりがある国々では、国旗や国章の世界においてもイギリスから大きな影響を受けました。
例えば国旗だと、オーストラリアの国旗のように、カントン部分にユニオン・フラッグを置いた「ブルー・エンサイン(イギリス青色船舶旗)」や「レッド・エンサイン(イギリス赤色船舶旗)」などがあります。
ウェールズの国旗について
イギリスの中にある国のひとつなのに、ユニオン・ジャックにはウェールズの国旗は含まれていません。その理由は、ウェールズは16世紀にすでにイングランドと政治制度が一体化していたからです。統一旗を作るときに特別に配慮する必要はなかったようです。
ウェールズの旗は、通称赤いドラゴン旗と呼ばれていて、古代ローマ時代から力の象徴とみなされ古い歴史を持っている旗です。
背景になっている緑と白の配色は、地中海沿岸原産の野菜であるリーキ(西洋ネギ、西洋ニラネギ)がモチーフとなっています。このネギは、ウェールズの国花のひとつ。ウェールズの国章にもネギが使われています。
イギリスの国章
四分割の盾型紋章。イギリスの国章には、冠をかぶった獅子(ライオン)がいます。獅子が被っている冠は、イギリスの戴冠用王冠である聖エドワード王冠で、この獅子はイギリスを守っている、という意味があります。
盾の中の左上と右下は、イングランドをあらわす赤字に3頭の黄色い獅子、右上はスコットランドをあらわす青地に黄色いハープ、盾の左には、イングランドをあらわす王冠を被った黄色い獅子、右にはスコットランドをあらわす、鎖に繋がれた白いユニコーン。
イギリスの歴史(略史)
- 紀元前6世紀頃にヨーロッパ大陸からケルト人が移住。紀元前1世紀に攻めてきたローマ人に支配される。5世紀にはヨーロッパ大陸からゲルマン民族のアングロ・サクソン人が侵入し、七王国が形成される。
- 1066年、ノルマン人が征服してノルマン王朝を建てる。その後、いくつかの王朝が興っては滅び、16世紀前半にテューダー朝のヘンリー8世が、ローマ教会から独立したイギリス国教会を打ち立て、16世紀後半のエリザベス1世のもとで絶対王政の絶頂期を迎える。
- 17世紀にピューリタン革命と名誉革命が起こり、立憲政治が確立する。1707年にスコットランドを、1801年にはアイルランドを併合し、グレートブリテン・アイルランド連合王国が成立。
- 18世紀後半に始まった産業革命により、「世界の工場」と呼ばれる工業の先進国となる。世界各地に植民地をひらき、ビクトリア女王(在位1837〜1901年)の時代に大英帝国の最盛期を迎えた。
- 20世紀、2度の世界大戦で戦勝国となるが、アフリカやアジアの植民地が次々に独立し、国の勢いは低下。
- 1973年、ヨーロッパ共同体(EC)に加盟。1979年にマーガレッット・サッチャーがイギリス初の女性首相に就任し、競争原理を取り入れた新自由主義政策のもと経済の回復を実現した。
- 2016年、国民投票によりヨーロッパ連合(EU)からの離脱が決定され、2020年1月31日に離脱した。
イギリスの場所と国データ
正式名称 | グレートブリテン及び北アイルランド連合王国 |
---|---|
英語表記 | United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland |
漢字表記 | 英国(略記:英) |
首都 | ロンドン |
略号 | GBR |
面積 | 24万3000㎢(日本の約3分の2) |
人口 | 6,708万人(2020年) |
通貨 | スターリング・ポンド |
---|---|
言語 | 英語、ウェールズ語、ゲール語など |
民族 | アングロサクソン系など |
宗教 | キリスト教(英国国教会)など |
建国年 | 1707年 |
国旗の比率 | 1:2 |
在留邦人数 | 6万2887人 |