インド
国旗のデザインの由来
この国旗は、インド独立の父として知られるガンディーらが考案した旗を改変して作られました。
サフラン色は勇気と犠牲、白は静謐(せいひつ)と平和、緑は公正と騎士道をあらわしています。また、サフラン色=ヒンドゥー教、緑=イスラム教、白=仏教、シーク教、キリスト教、ジャイナ教などの宗教をあらわすともいわれ、国内の2大宗教であるヒンドゥー教とイスラム教、またそれ以外の宗教の調和を象徴しています。
中央にあるのは、「法輪(チャクラ)」と呼ばれる仏教のシンボル。古代インドのアショカ王ゆかりの記念塔からとったもので、24本の車軸は1日の24時間、終わりなき時の流れや宇宙の真理、輪廻転生の思想をあらわすとされています。法輪の青色が、空と海の色の反映といわれることも。
インドの国名について
大河インダス川の国インド。古代文明の発祥地「インダス川」のサンスクリット語「シンド(大河)」に由来する。ペルシャ人はこれをヒンズーと呼んだ。16世紀初頭にペルシャに来航したポルトガル人は、ヒンズーをポルトガル語化して「インド」とした。
インドの国旗の歴史
インドは、紀元前25世紀頃にインダス文明がおこった地。紀元前から多くの王朝が興亡しましたが、16世紀、ムガル帝国によって統一されました。その後はヨーロッパの列強国による争奪戦の舞台となり、19世紀半ばにはイギリス領インド帝国となります。そして激しい反英独立運動を経て、1947年、パキスタンと分離する形で独立を果たしました。
イギリス支配からの独立を目指したインド国民会議派(1885年のインド国民会議から生まれたインド最初の国民的な政党)のリーダー、マハトマ・ガンディーは1921年、反英独立運動の象徴として、新しい旗のデザインを提案しました。
赤はヒンドゥー教徒、緑はイスラム教徒、白はそのほかのインドの民族をあらわします。描かれている糸車(チャルカ)のシンボルには、インドが綿織物を売って自立するというガンディーの願いが込められていました。
イギリスの支配が強まっていた当時、インドではイギリス製の安い綿織物が売られるようになり、インドの伝統的な綿織物工業は衰退してしまいました。また、土地と税の新しい制度をイギリスから押し付けられ、人々はイギリスへの不満を高めていったのです。
こうした中、ガンディーらは、「民族意識を高めて独立を勝ち取ろう(民族教育・スワラージ)」、「イギリス製品を買わず、国産品を愛用して国内の産業を守ろう(英貨排斥・スワデーシー)」とスローガンを掲げ、独立運動を盛り上げます。この旗に描かれた伝統的な糸車は、産業革命後のイギリスの大量生産方式・機械文明への抵抗をあらわすシンボルとして使われました。
10年後の1931年には、旗のデザインが修正されました。
この新たなスワラージ旗。中央のシンボル部分以外は、今のインドの国旗とほぼ同じですね。サフラン・白・緑の横三色旗の白の部分に青の糸車を置き、糸車がはっきりと見やすいデザインになりました。
糸車が使われた2つの旗ですが、デザインしたのはどちらもピンガリベンカイヤという人物です。彼は、農業と地質学の博士号を持ち、またダイヤモンドの専門家だったため「ダイヤモンドベンカイヤ」と呼ばれていて、自由の闘士ともいわれています。
さて。デザインのリニューアルは無事に終わりましたが…このデザインには欠点がありました。糸車のシンボルは左右対称ではないので、旗を染め抜いたときに裏表が別になってしまいます。さらに当時、ガンディーが掲げる政策は世界の経済学者から批判されていました。
独立直前の1947年7月、インドで憲法を決める会議が開かれました。
インド初代首相のジャワハルラール・ネルーは、全世界の平和と自由を目指す新しいインドのシンボルとして、今の国旗に使われている「法輪(アショカ・チャクラ)」を提案します。満場一致で採用が可決され、糸車は排除されることになりました。国旗のシンボルは、特定の団体や運動を代表するものであってはならない、と判断されたからです。
ガンディーは糸車の排除に不服でしたが、結局これを受け入れました。
民衆暴動やゲリラ戦の形をとらない「非暴力、不服従」を提唱し、独立運動を導いたガンディー。結局彼の理想としていた統一インドの夢は破れてしまいましたが、ガンディーの平和主義的な手法は、人権運動や植民地解放運動において世界中に大きな影響を与えました。
インドでは、毎年10月2日(ガンディーの誕生日)を「ガンディー記念日」として国民の祝日に定めています。
インドの国データ
正式名称 | インド |
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英語表記 | India |
漢字表記 | 印度(略記:印) |
首都 | ニューデリー |
略号 | IND |
面積 | 328万7,469㎢(日本の約8.7倍) |
人口 | 12億1057万人 |
通貨 | ルピー |
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言語 | ヒンディー語、ベンガル語、英語など |
民族 | インド・アーリヤ族など |
宗教 | ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教、シク教、仏教、ジャイナ教など |
独立年 | 1947年(イギリスから) |
国旗の比率 | 2:3 |
在留邦人数 | 9197人 |