エチオピア
国旗のデザインの由来
アフリカ最古の独立国、エチオピア。
最初の国旗は1897年に国内を統一した英雄、メネリク2世によってつくられた緑・黄・赤の三色旗でした。この3色は『旧約聖書』の「創世記」(ノアの箱舟)で、神がノアたちを祝福して述べる聖句に出てくる虹に由来しています。キリスト教の三位一体をあらわし、「虹の旗」といわれるようになりました。
この緑・黄・赤の配色は汎アフリカ色とよばれています。1960年代から70年代のアフリカで続々と独立した国々は、この配色を手本に国旗をつくりました。エチオピアは、1941年まではアビシニアと呼ばれ、ヨーロッパ列強の植民地化を(一時期をのぞいて)逃れ、孤高の存在を保ってきた国。ブラックアフリカのリーダー的存在で、アフリカ連合(AU)の本部も置かれています。
今の国旗は1996年に制定されたデザインで、緑は労働・土地が良いこと・発展、黄色は希望・正義・平等を、赤は自由と平等を求めて流された血をあらわします。
中央に置かれた国章の五芒星は「ソロモンの星」。こちらも、『旧約聖書』に登場するソロモン王とシバの女王の子メネリク1世がエチオピアを建国したという伝説にもとづいているシンボルです。今日では、星は人々の結束とエチオピアの愛国心をあらわしています。青い円は平和を、黄色の光線は輝ける繁栄をあらわし、また光線を等間隔に配置し、民族や宗教上の平等を示しました。
エチオピアの国名について
ギリシャ語で「日焼けした顔の人々」を意味する「アンティオピア」に由来する。
エチオピアの歴史
- 1世紀頃、アクスム王国が成立
- 4世紀、エジプトからキリスト教のコプト派が伝わる
- 13世紀、エチオピア帝国成立。諸侯が分立したのち、19世紀にテオドロス2世が再び統一する
- 19世紀末、メネリク2世がイタリア軍の侵入を退ける
- 1936年、イタリアに一時併合されるがこれを撃退し、1941年に独立(独立回復)
- 第二次世界大戦後の1952年、北部をエリトリアと連邦を結成し、1962年にエリトリアを併合するが、エリトリアの分離独立をめぐって内戦になる
- 1974年のクーデターで軍事政権が成立。翌年に社会主義路線が敷かれた
- 1991年、軍事政権は反政府組織に倒され、内戦が終わる
- 1995年、国名をエチオピア連邦民主共和国に改める
エチオピアはアフリカ最古の独立帝国でしたが、1974年にハイレ・セラシエ皇帝(ハイレ・セラシエ1世)が軍に追放され、共和制の国家となりました。
エチオピア帝国最後の皇帝、ハイレ・セラシエ1世
ハイレ・セラシエ1世は、エチオピア帝国最後の皇帝で、またアフリカ統一機構(現在のアフリカ連合の前身)の初代議長でもあった人物です。彼自身はエチオピア正教徒でしたが、ジャマイカを中心とする黒人運動「ラスタファリ運動」においては、神ヤハウェ(ジャー)の化身であり、地上における三位一体の一部であると信じられています。
1927年、ジャマイカの汎アフリカ主義運動家、マーカス・ガーヴィーが「アフリカを見よ。黒人の王が生まれる時、我々は救われるだろう。」と予言したため、その3年後に即位したハイレ・セラシエ1世は南北アメリカ大陸の黒人達から、アフリカ大陸を統一し、離散した黒人のアフリカ帰還を告げる救世主として崇められるようになりました。彼は即位前の名をラス・タファリ・マッコウネンと言い、この名前を取って崇拝者たちのことをラスタファリアンと呼びます。
彼の存在は世界各地の黒人に大きな希望を与えました。1966年にハイレ・セラシエ1世がジャマイカを訪れたときには民衆の熱狂的な歓迎を受け、それは皇帝自身が動揺するほどだったそうです。そして、ハイレ・セラシエ=ジャー=神を崇めるラスタファリズムは、ジャマイカの音楽に大きな影響を与えました。ドレッド・ヘアやラスタ・カラーといったレゲエ・アイコンもラスタファリズムの思想に基づいたものです。
ラスタたちから神の化身と崇められている一方、エチオピアでは独裁を続け、国民の生活は悪化の一途を辿りました。飢饉が起きても対応策を取らないどころか飢饉の事実を隠蔽するなど、国際社会の非難を浴びました。さらに皇帝自身による不正が発覚。次第に権威もカリスマ性も地に堕ちてしまいます。帝政打倒の声が高まる中、クーデターにより逮捕・廃位され、拘禁中の1975年に暗殺されました。
- ジャマイカ音楽史:ハイレ・セラシエ1世のジャマイカ訪問|RED BULL MUSIC ACADEMY
- カリブ海に生まれた「ラスタファリズム」という黒人宗教とボブ・マーリー、レゲエミュージックの数奇な歴史【橘玲の世界投資見聞録】
- 「約束の地」での厳しい現実、エチオピアのラスタたち|AFPBB News
エチオピアの国データ
正式名称 | エチオピア連邦民主共和国 |
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英語表記 | Federal Democratic Republic of Ethiopia |
漢字表記 | 哀提伯 |
首都 | アディスアベバ |
略号 | ETH |
面積 | 109万7000㎢(日本の約3倍) |
人口 | 1億922万人 |
通貨 | ブル |
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言語 | アムハラ語、英語 |
民族 | オモロ族、アムハラ族、ティグライ族、バサ族など約80の部族 |
宗教 | キリスト教、イスラム教など |
独立年 | 1137年頃にエチオピア帝国誕生 |
国旗の比率 | 1:2 |
在留邦人数 | 204人 |